2022.10.12
2022年10月2日、よく晴れた日曜日の朝、くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校を訪ねました。
この「くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校」は、2022年度のはじめて助成1年目の活動です。
くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校は、毎月一回、定期的に開催されています。
ここは甲賀市内の山の中。
クヌギの木に囲まれた場所なので、くぬぎの森と名付けたそうです。
開始は10時から。開始準備をする、副代表の山本彩美さんと、山本さんの息子さんに、道具を置いてある小屋に案内していただきました。
お昼に作る味噌汁のために、鍋を洗います。懐かしい井戸の手押しポンプを使って水を汲みます。息子さんは、とても自然な動作で呼び水をポンプに入れ、何度か空押しをして、井戸水を出しました。
「この井戸も、子どもたちと一緒に水脈を探すダウジングから始めて、掘ったんですよ。」と山本さん。
そう、このくぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校では、何でも手作りするのが基本です。
井戸のそばには、これも手作りの竈(かまど)がありました。竈に使っている日干しレンガの泥は、敷地内の小さな池を浚渫(しゅんせつ)して運ぶところから、子どもたちがやったそうです。
山本さんは、もともと登山が大好きで、休みの日はいつも山へ行っていたそうです。しかし、2011年3月11日に起きた東日本大震災で、それが一変しました。
「IHコンロで育った現代の子どもたちは、被災した時、自分で火をおこすことすらできませんよね。
この場所を見つけ、人を介して借りることができ、2013年にママ友5人で、このくぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校を始めました。
普段ここで火を焚いて大工仕事や泥遊びをやって、自然の中で暮らす体験をしていれば、被災してもパニックを起こさず、何とかなるさ、と落ち着いて対処できると思って。」と山本さん。
確かにここには電気も水道もありません。スマホは圏外ギリギリ、という山の中です。洗い物には井戸水を使えますが、飲み水ではないので、煮炊きするためには水道水を持ち寄ります。ここで過ごす子どもたちは、水の大切さをよく知っているようでした。
山本さんご自身は、山仕事のプロとして働いてこられ、夫であり、くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校代表の山本実さんは大工さんです。参加する子どもたちに、作業中、危険がないよう指導できます。
午前中に集まった親子は、5、6組。子どもたちは自分たちで好きなように遊び始め、お母さんたちは各自持参した野菜を鍋に入れ、ストーブで火を焚き始めました。焚き付けも手慣れたものです。お昼ごはんはお弁当を持ってきて、具沢山の味噌汁を大鍋で作って、熱々をみんなで食べることになっているそうです。
子ども達にはリヤカーに乗って、ゆるい傾斜を降りる遊びが人気。
また、広場の端にある金木犀に、大人が大きな布をロープでくくりつけると、あっという間にハンモックが完成しました。
満開の金木犀の花の甘い香りに包まれて、ハンモックに揺られるなんて。絵本の中の一場面のような光景でした。
こちらは敷地内の栗の大木です。
山本さんの息子さんが、イガに包まれた栗を落とそうと、木に登ってゆすっているところです。他の子どもたちは、地面に落ちたイガから栗を取り出して集めています。集めた栗の実はさっそくストーブでゆでられていました。
今回のできるコトづくり制度の助成金は、主にバイオトイレ建設に使われています。
新型コロナ感染拡大の影響で、参加者からそれまで使用してきた簡易トイレは不潔だ、という声があがり、「どうせ作るなら、住みたくなるくらい清潔なバイオトイレを作ろう」ということになったそうです。もうすぐ完成というトイレの建物は、確かに山小屋のような雰囲気。
山本さんは、自由に遊んでいる子ども達に「大工仕事したい人~!」と呼びかけ「やりたい」と手を挙げた子だけを連れてきました。
「今日は〇〇をします!順番に並んでください、ということはやりません。やりたい子がいなかったら、大人だけで黙々とやるだけです。でも、いつの間にか子どもが寄ってくるんです。そうしたら、ちょっとやってみる?と振るわけです。」と山本さんは笑いました。
くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校は、自発的に取り組むことを大切にする場なのですね。
こちらがトイレの内部です。
床下には、おがくず、燻炭(くんたん)、籾殻(もみがら)、米ぬかなど、排せつ物を分解してくれる菌の好物が詰められているそうです。床の二か所に穴を開けて、ポータブル便座を交互に置いて排せつ物が偏らないようにするのだとか。
完成が楽しみです。
くぬぎの森自然遊び広場&山の暮らし学校が、これからも多くの親子のたくましく生きる力を育む場となりますよう、応援しています。