2023.12.05
2023年11月16日、大津市にある、まちかどプロジェクトを訪問しました。活動助成1年目の共生のまち演劇プロジェクト実行委員会「共生のまち演劇プロジェクト」としての12月公演に向けて、稽古が行われています。
まちかどプロジェクトは、生活介護事業所です。自宅からの送迎車でここに来て、食事や入浴などの介護を受ける以外に、「人から与えられた仕事でなく、障害者だからこそできる『個性』や『やりがい』を重視した『場づくり』をみんなで考えています。障害者の労働権や賃金にこだわらず、経験やネットワークを充実させ、生き生きとした生活を目指するところです。」とあります。(▼まちかどプロジェクトホームページでの説明)
その活動内容として「演劇、人権啓発・街作り等の活動、イベントのバザー出店、教養、お出かけ等」とあり、その一部、有志の演劇活動が、できるコトづくり制度で活動助成を受けている「劇団まちプロ一座(以降 まちプロ一座)」の公演です
施設内の一室で、ちょうど稽古が始まるところでした。脚本と演出を担当する、種田洋平さんは、まちかどプロジェクトの職員です。それまで演劇に関わったことがなかったのに、異動でここに配属されたとき、まちプロ一座 座長の小石哲也さんに「ここは演劇、やってるしな。」と誘われ、まちプロ一座に参加することになったそうです。
それ以降、今回の公演でご一緒する市民劇団グループ「橋」さんはじめ、音響さん、照明さん、舞台監督さんに指導や助言をもらったりしながら、独学で演劇の勉強を積んでこられたのだとか。その種田さんから、メンバーに「6場、変更は昨日お伝えしました。5場から6場続けていきます。」の声かけから、稽古が始まりました。
今回の劇では、まちプロ一座の演劇がどのように作られ、演じられているか、いわば内部のお話だそう。
チラシ右側に写っているのが、まちかどプロジェクト一座の座長の小石哲也さんです。
種田さんが「場面転換―」と声を掛けると、照明が暗くなり小道具が取り替えられました。この照明や効果音なども劇団まちプロ一座の当事者メンバーが担当しています。
次の場面では、たくさんの登場人物の会話で進んでいきました。劇団の皆さんは既に台本が頭に入っていて、会話で場面が進んでいきます。
「あっちゃん、ええこと言うてるやん」
「いい作品作りたいやん」
「次のステップに向けて」
「わ・た・し・に・も・で・き・る・か・な」(音声の音入力)「私にもできるかな?」
そこで種田さん「なんか、つながらへんな」もう一回行きましょう」。
流れを大切にしながら、それぞれの人物像がハッキリ出るような演出をされているのを感じました。
トーキングエイドというコミュニケーションツールを使い、自分で声を出す代わりに入力して、機械から言葉を発する障害当事者が演者の中におられました。一音ずつ、自分でキーボードを押していき、最後に言葉としてまとめて言葉が聞こえてくるので、自分のセリフの番になる前から音声入力していかないと、どうしてもタイミングがずれてしまいます。どうやったら、その場の流れが止まってしまわないようにできるか、職員役の職員の方も一緒に考え、工夫しながら稽古が行われていました。
熱心な稽古が続き、あっという間に時間が過ぎていきました。「少し休憩しましょう」と一旦解散しますが、種田さんは何人かの演者と「セリフのタイミングが遅れたのはなんでかな?」と原因を確認していました。
休憩時間に、座長の小石さんにインタビューができました。
─脚本を覚えるのは、どれくらい時間がかかりますか?
「僕の場合、二ヶ月三ヶ月くらい。」
─演劇を始めるきっかけは?
「最初は、流されるまま、やってほしいと頼まれたから。でも、障がい者の気持ちとか、思いを演劇で伝えたい、という、ところに共感して、なんとかやってきています。僕は二代目座長なので初代座長が、演劇というものが大好きで。初代の話をすると、僕もそうだけども、言語障害を持ってはったんです。言語障害を持っている人達が、どうやって自分たちの気持ちを世の中に伝えていっているのか、ということから始まって、いろいろ考えはったらしいんです。いろいろ試してみはったらしいんですが、演劇が伝えやすいんではないか、と、演劇という方法にたどり着いたらしいんです。」
─やりがいはどんなところですか?
「やっぱり、お客さんの前でやって拍手してもらえたり、よかったよ、という感想をもらえたり。よかっただけじゃなくて、ここがわかりにくかった、という辛口の感想をもらったりすると、うれしいし、やりがいを感じます。」
小石さんは座長を務めるくらいだから、最初から演劇を志しておられたのだろう、と勝手に思い込んでいた私は、「流されるまま」という言葉が意外で、思わず笑ってしまうとともに親しみを感じました。
他の方にもきっかけをお聞きしたところ、
「他のみんなが演劇をやっているのを見て、自分もやりたいな、と思ったから。」とのことでした。活き活きと演劇に取り組む姿は、周りの方にも影響するのですね。
ここで休憩が終わり、稽古が再開されました。
その演技を見ながら、演出の種田さんは
「大きい声で!」
「いいですよ!いいですよ!」
と、どんどん声掛けをされていました。
「オリジナル作品、いいね!」
「みんな、行くで!えいえいおー!」
この場面は扇子を持った方が音頭を取り、新しい劇に取り組もう、と全員で気炎を上げて終わりでした。劇場で盛り上がりそうです。
この場面で稽古は終了し、帰る私を皆さんが見送ってくださいました。
短い時間ではありましたが、皆さんの演技を見ていると、ところどころにクスッと笑えるところも入れ込んであり、熱演にいつしか引き込まれていきました。
共生のまち演劇プロジェクトの公演チラシは、座長の小石さんが文字通りの顔となっています。
グループ「橋」劇団との2部構成です。ぜひ、ご覧ください。
共生のまち演劇プロジェクト 第7回公演
「僕はいつも横になっている…だけとは限らない」
「旅する蝶のように ─大逆の人─」
月日:12/23(土)・12/24(日)
時間:13:00~15:00
会場:スカイプラザ浜大津
(〒520-0047 滋賀県大津市浜大津1丁目3−32)
入場料:1500円(どちらの演目も見られます)
予約・問合:まちかどプロジェクト 077-543-2844(担当:上田・種田)
13:00~
劇団まちプロ一座 オリジナル作品
「僕はいつも横になっている…だけとは限らない」
16:00~
グループ「橋」
「旅する蝶のように ─大逆の人─」
■ロビープログラムあり
12/23(土):M&M
12/24(日):京都WAKUWAKU座
両日:しがけん里親げきじょう~里親ってなあに?~
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2024年度も共生のまち演劇プロジェクト実行委員会が、演劇公演を行います。
キャッチコピーは「劇場から広がる心のバリアフリー」です。
お申込みは、以下の連絡先へ直接どうぞ。
共生のまち演劇プロジェクト 第8回公演
「秋の風は二度吹く」
グループ橋「タクシー!」
月日:2024年 1/25(土)・1/26(日)
時間:「秋の風~」開演13:30~、「タクシー!」開演16:00
会場:スカイプラザ浜大津
(〒520-0047 滋賀県大津市浜大津1丁目3−32)
入場料:1500円(どちらの演目も見られます)
予約・問合:077-543-2844(担当:上田・種田)
■ロビープログラムあり